2項道路後退部分の隣地境界塀 ― 2017/11/08 22:07
建築基準法42条2項により幅4m未満の道路は、原則として道路中心から2m後退し、その部分は道路となり同44条によってそこには建築物や塀などを築造することはできないことになっています。そのため家を新築などする場合には後退した上でその部分を道路として使えるようにしなければならず、そうしなければ建築確認も検査済証も下りません。これは消防車や救急車が入って来れないような狭い道をなくしていこうというまことに公共性にかなった法令です。
ところがこの法令を杓子定規に解釈してしまうと一つ問題が起きます。新築などする敷地の道路沿いにあった塀などを撤去するのは当然として、まだ後退しない隣家との共用の塀が隣地境界線上に建っていた場合、厳密に言うとその塀の厚さの半分が道路に残ってしまうことになります。
先月ちょうどそのような住宅の完了検査を受けることがあり、その時は境界塀の一部としてアルミのポールが1本でしたが、そのアルミポールを撤去しなければ検査済証は出せないということを特定行政庁である立川市から言われてしまいました。
隣家との共有塀を壊すということは防犯上も美観上も、また壊したり復旧したりするための費用も掛かり、建築主にとっても隣家にとっても良いことは何もなく、またその道路を使用する近隣住民にとってもそのために道路が広くなるわけでもなく何もメリットはありません。
本当にそんなことまで建築基準法は求めているのかと思いちょっと調べてみました。
横浜市では隣地との共用の塀は建築基準法第44条に抵触しないものとして取り扱うことを明文化していました。(建企指第1054号 建築局長 平成11年6月3日)
国土交通省住宅局市街地建築課では法文の通り道路に塀があってはならないが、横浜市の扱いを問題視することはない。問題があれば所管の特定行政庁に相談してほしいとのことでした。
杉並区では隣家の承諾が得られないことはあり得るので、その場合は将来撤去するということの念書を求め、何が何でも許可しないということではないようでした。
文京区、足立区ではやはり法文の通り道路に塀があってはならず、もし工事完了時にそのような塀があれば検査済証は出せないとのことでした。しかし推奨はできないが、塀の部分を敷地から除いて申請するというようなことは現実に行われていることであり、考えられなくはないとうやむやに処理するようなことも言っていました。またそのようなことは法律に問題があるのだからそっちを問題にしてほしいだとか、そのような塀がある場合はよそに確認を出してほしいだとか、いかにも事なかれ主義公務員の本音も聞けました。
当の立川市では横浜市のような扱いも、敷地から塀の部分を外すうやむや処理も認めず、こちらもいつまでも引き延ばすことはできないのでやむを得ず何とか隣家を説得して撤去させていただきました。
なぜそのような硬直した法解釈と運用しかできないのでしょうか。立川市の審査係長からブロック塀を半分削らせたこともあると聞かされたときは驚き、塀が倒れてしまうのではと言ったらちゃんと補強もさせたと。そんなバカげた指導をすることが有能な建築指導担当職員の証であるとでも思っているのでしょうか。法律とは建築確認制度とは何のためにあるのかをもう少し基本から考えて、横浜市などの現実に即した考え方を見習ってほしいと思います。

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