建築写真のあおり補正2013/01/07 23:01

建築写真は原則としてまっすぐ立っている柱や壁などはまっすぐ写っているのが基本です。パース(透視図)を作成するための透視図法というものがありますが、これも垂直部分は垂直にが基本です。建築専門誌などに載っている写真や竣工写真に使われる建築写真専門家による写真は原則としてほぼすべてこのような写真です。ところが一般雑誌や新聞、旅行パンフレット等々の大半の建物の写真はプロのカメラマンによるものでも柱や壁は傾いていて私などつい気になってしまいます。
目の前に建っている建築物を全体が画面いっぱいに写るようにカメラを上に向けて撮ると、上すぼみになって柱や壁が傾いて写ります。これを透視図のように写すにはあおりという技法を使います。あおりとは、センサーやフィルム面より写る範囲(イメージサークル)の大きいレンズの光軸をずらして、カメラを傾けることなく上下左右任意の方向へより広い範囲を写しこむ技法です。あおりをするには大・中判カメラを使用するか一眼レフカメラでシフトレンズを使わなければなりませんが、デジタルカメラが普及するにつれてデジタル処理によって補正することがかなり一般的になってきたようです。私もフィルムカメラを使っていた頃はミノルタの SHIFT CA 35mm f/2.8 という独特の機構でシフトレンズとしては使いやすいけれど高くて重くて大きな三重苦のレンズを長い間愛用していましたが、デジタルカメラを使うようになってからはパソコンでいわゆる遠近補正とかレンズ補正とかいうような機能を使って写真を加工しています。でもこれ正しく補正できているのだろうかとずっと疑問に思っていました。そこでいくつかのソフトで試してみることにしました。
今回試したソフトは現在所有している以下のソフトです。
古い順に
● Corel Paint Shop Pro Photo X2 (以下PSPと略記)
● Photoshop Elements 7.0 (以下PSEと略記)
● Hugin
PSPとPSEはちょっとバージョンが古いです。Hugin ( http://hugin.sourceforge.net/ )は最近見つけたフリーソフトです。
テストする写真として、A3用紙に5cm間隔の格子線を描いたものを建物の壁面に見立てて撮影したものを使用しました。
( OLYMPUS E-520、ZUIKO DIGITAL 9-18mm を使用し9mm(35mm判換算18mm相当)で撮影)

130107-1
写真1
建物を真正面から見上げたことを想定した写真です。
垂直線のみ補正し、レンズを上方にシフトした状態を再現しようとしています。

130107-2
写真2
中央正面より右に寄って見上げたことを想定した写真です。
垂直線と水平線を補正し、レンズを上方と左方に同時にシフトした状態を再現しようとしています。

以下は各写真を3種のソフトで補正した写真です。
補正後に描き入れた青い格子線は縦横間隔が等しく、正しく補正されていれば青い格子線と写真に写っている黒い格子線が一致します。

130107-3
写真1をPSPで遠近補正した写真です。上下方向が伸びすぎているのがわかります。

130107-4
写真1をPSEで遠近補正した写真です。上下方向が短いのがわかります。

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写真1を Hugin で遠近補正した写真です。ほぼ正確に補正されています。

130107-6
写真2をPSPで遠近補正した写真です。上下方向が伸びすぎているのがわかります。

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写真2をPSEで遠近補正した写真です。垂直線と水平線の補正が同時に完全にできませんでした。

130107-8
写真2を Hugin で遠近補正した写真です。ほぼ正確に補正されています。

PSPとPSEは最新バージョンや上位バージョンでは違う結果になることもあるかもしれませんが、今回テストした限りでは Hugin がもっとも実用になりそうな結果となりました。
これら以外に SILKYPIX Developer Studio 4.0(試用版)を試しましたが傾きが大きすぎて補正しきれませんでした。ShiftN というフリーソフトもありましたが水平の補正ができないのでテストからはずしました。

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